猫の額








『七夕』 #早安
初書き早安でした。




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「ふーん」
 七夕のことなど、さして彼の興味を惹かなかったのだろうか。薬草を選り分ける手はそのまま、今日の夕ご飯は何にしようかと思ったときだった。
「……笹、取ってくる?」
「え、食べられるの?」
 驚いて尋ねると、早安は目を丸くして、そして吹き出すように笑い出した。
「お前、ほんっと食べることばっか」
「え、なんで! そんなことないよ」
 ツボにはまったらしい早安は顔を片手で覆いだした。
「――そんなに笑わなくても」
「花が言ったんだろ。"たなばた"には笹を使う
んだって」
「……興味、あるの?」
「うん?」
 目尻の涙を拭いながら、早安が柔らかく微笑んだ。
「花のことなら、興味ある」
「……そっか」
 おそらく赤くなってしまったであろう頬は、きっと早安にバレているだろうから。
「七夕、したいな」
 構わず、わがままを言った。

三国恋戦記 編集

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