猫の額
『いついつまでも』
#子龍
#三国恋戦記・今日は何の日
「恋人たちの日」
思いでがえし後のお話です。
****************
「では、行ってまいります」
「うん。気をつけてね」
恋人になってからお決まりのやりとりを、今日も繰り返す。まっすぐ私を見つめる瞳にはまだ少し照れるけれど、そのまま見つめ返せば微笑んでくれる――はず、が……。
「あの、花殿」
「なに?」
いつもと違い、目を逸らしてしまった子龍くんに首を傾げる。
「今日は、その……、一緒に夕餉を共にしてもよろしいですか?」
「え? うん……。勿論だよ」
朝だけでなく、夕飯を一緒に食べるのはよくあることなのに。何故か緊張している雰囲気の彼に、目を瞬かせる。その間にも子龍くんの白い肌が赤く染まっていく様子に、ふと心配になって手を伸ばした。
「……熱?」
「え! いえ、そのっ」
手の甲で触れた彼のひやりとした頬に、そっと胸を撫で下ろす。風邪ではないようだと安堵したところで、子龍くんの驚きで見開かれた瞳に気付いて――びしりとそのまま固まってしまった。
「あ、ご、ごめんね急に……」
――これは、多分あれだ。夕餉だけのお誘いではない。
居た堪れない気持ちになりながら、そそくさと手と目線を下げる。いえ、ともごもごと言葉にならない子龍くんの返事。勘違いなどではないのだろうと、一気に顔に熱が昇った。結婚の約束までしているというのに、こういう雰囲気には未だ慣れない。
「で、ではっ。行ってまいりますね」
「う、うん。気をつけてね」
二人で同じやりとりをぎこちなく繰り返しながら、せめて見送りだけはと顔を上げる。そこには、真っ赤になっている子龍くんの顔。きっと私も同じように赤くなっているのだろうと思うと、自然と笑いが溢れてしまった。余分な力がすっと抜けていく。
「いってらっしゃい」
「――はい」
彼も同じなのだろうか。頬を染めたまま、いつものように笑い返してくれた彼に、今日も胸がいっぱいになる。
子龍くんが恋人になってから繰り返される幸福が、いつか形を変えてもずっと続きますように。
2021.11.11 18:59:46
三国恋戦記
編集
HOME
読み終えた場合は、ウィンドウを閉じてお戻りください
三国恋戦記
(45)
三国恋戦記 魁
(30)
ハートの国のアリスシリーズ
(35)
アラビアンズ・ロスト
(4)
仲花
(22)
三国恋戦記・今日は何の日
(14)
伯巴
(10)
エース
(8)
夢
(6)
本初
(6)
早安
(5)
公路
(5)
ペーター
(4)
その他
(3)
ユリウス
(3)
ボリス
(3)
ブラッド
(3)
翼徳
(3)
孟徳
(3)
華陀
(3)
ビバルディ
(2)
ゴーランド
(2)
子龍
(2)
孟卓
(2)
玄徳
(2)
仲穎
(2)
ナイトメア
(1)
ディー&ダム
(1)
エリオット
(1)
ブラック×アリス
(1)
クイン×アリス
(1)
ルイス
(1)
ロベルト
(1)
マイセン
(1)
カーティス
(1)
ブラックさん
(1)
雲長
(1)
雲長
(1)
尚香
(1)
仲謀
(1)
公瑾
(1)
華佗
(1)
芙蓉姫
(1)
奉先
(1)
本初
(1)
妟而
(1)
孔明
(1)
文若
(1)
Powered by
てがろぐ
Ver 4.1.0.
#三国恋戦記・今日は何の日 「恋人たちの日」
思いでがえし後のお話です。
****************
「では、行ってまいります」
「うん。気をつけてね」
恋人になってからお決まりのやりとりを、今日も繰り返す。まっすぐ私を見つめる瞳にはまだ少し照れるけれど、そのまま見つめ返せば微笑んでくれる――はず、が……。
「あの、花殿」
「なに?」
いつもと違い、目を逸らしてしまった子龍くんに首を傾げる。
「今日は、その……、一緒に夕餉を共にしてもよろしいですか?」
「え? うん……。勿論だよ」
朝だけでなく、夕飯を一緒に食べるのはよくあることなのに。何故か緊張している雰囲気の彼に、目を瞬かせる。その間にも子龍くんの白い肌が赤く染まっていく様子に、ふと心配になって手を伸ばした。
「……熱?」
「え! いえ、そのっ」
手の甲で触れた彼のひやりとした頬に、そっと胸を撫で下ろす。風邪ではないようだと安堵したところで、子龍くんの驚きで見開かれた瞳に気付いて――びしりとそのまま固まってしまった。
「あ、ご、ごめんね急に……」
――これは、多分あれだ。夕餉だけのお誘いではない。
居た堪れない気持ちになりながら、そそくさと手と目線を下げる。いえ、ともごもごと言葉にならない子龍くんの返事。勘違いなどではないのだろうと、一気に顔に熱が昇った。結婚の約束までしているというのに、こういう雰囲気には未だ慣れない。
「で、ではっ。行ってまいりますね」
「う、うん。気をつけてね」
二人で同じやりとりをぎこちなく繰り返しながら、せめて見送りだけはと顔を上げる。そこには、真っ赤になっている子龍くんの顔。きっと私も同じように赤くなっているのだろうと思うと、自然と笑いが溢れてしまった。余分な力がすっと抜けていく。
「いってらっしゃい」
「――はい」
彼も同じなのだろうか。頬を染めたまま、いつものように笑い返してくれた彼に、今日も胸がいっぱいになる。
子龍くんが恋人になってから繰り返される幸福が、いつか形を変えてもずっと続きますように。