猫の額








『七夕』 #本初
初めて書いた本初様でした。




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「七夕」

「本初様、お庭の竹を一本頂いてもいいですか?」
「構わぬが……。何に使うのだ?」
 書くものなら足りているぞ、と首を傾げられ、思わず笑いをこぼす。どうやら竹簡にするものと勘違いされたらしい。
 七夕について説明すると、風流なものだと本初様が顔を綻ばせた。
「どれ、私が切ってやろう」
「え、いいですよ!私がやりますから」
「……まだ伏せっている日があるとはいえ、女子のお前よりは力はあるぞ」
「そ、れは。……そうかもしれませんが」
 それを実感したときのことが脳裏に蘇り、思わず視線を逸らしてしまった。けれどそんな私に気づくことなく、本初様が立ち上がる。
「確か東の庭に大きいものが」
「あ、あの、立てかけないといけないので、小さめの方が。あと、誰かにお願いしますから──」
「……お前の望みを叶えたいという、私の願いは叶わせてくれぬのか」
 そんな目で、声で。言われて誰が断れるのだろうか。
「……お願い、します」
 根負けした私の言葉に、本初様が目を細めて、至極嬉しそうに笑うものだから。短冊に書く前に願い事が叶ってしまって、何を書こうと困って空を見上げた。

三国恋戦記 魁 編集

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