猫の額








#伯巴

#三国恋戦記・今日は何の日
『バレンタイン』
三国恋戦記魁 伯符×巴(現パロ)
戦がなければ、日常の中にいる彼女ならば、こんな一面もあったかもしれないなという思いで書きました。多分続きます(書きたい……)。




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 消えてなくならないものがいいなんて



 息を吐けば、街灯の下で白く色づき、一瞬で消
えてしまう。
 バタンとドアが閉まる音に、目当てのバスが到
着していたことを知る。これで何度バスを逃した
のだろうかと頭の片隅で考えた。
 ──いい加減、帰らなければ。
 抱えていた鞄を持ち直し、立ち上がる。
 バスを待つより、駅まで歩いた方がマシな気がしたためだ。
「なんだ、今帰りか」
 背後からかけられた声に、頭の先からつま先まで緊張が走った。
 振り返りたくなくて、でも無視するわけにもいかないと、意を決して後ろを向く。
 予想通り、黒いマフラーを巻いた、伯符先輩がそこにいた。今朝見かけた姿と、まったく同じ――。その事実に、目を疑った。
「……お疲れ様です」
「ああ」
 先輩はちらりとバス停の時計を確認し、軽くため息をつく。
「出たばかりか」
「……はい」
「駅まで歩くのか?」
「……そうしょうかなと」
「じゃあ行くか」
 当然のように一緒に帰る流れに戸惑いつつも、別にこれが初めてではないし、と自分に言い聞かせる。
 これに特別な意味なんて、ない。
 先に歩き出してしまった彼の後ろを慌ててついて行きながら、冷え切った手を擦り合わせて間を埋める。

三国恋戦記 魁 編集

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